脱サラや独立を考えている方で、コンビニエンスストアの経営を考えている方もいるのではないでしょうか。
少ない資金で始めることができるコンビニエンスストアは、脱サラや独立する手段としては比較的簡単に始めることができます。
一方で契約後に思うように行かなかったケースが発生し挫折する事も多くあります。
コンビニエンスストアを経営するにあたり、どのように考えれば良いかを筆者の経験をもとにお伝えいたします。
この記事では
- 無計画なフランチャイズ契約は絶対NG
- コンビニオーナーは儲かるのか
- コンビニオーナーと本部の関係
- コンビニFCになるために必要なもの
- コンビニオーナーの労働時間
について元コンビニオーナーの筆者が解説していきます。
無計画なフランチャイズ契約は絶対NG
独立するにあたり、たくさんの選択肢の中からコンビニエンスストアの経営を選択したのであればさらにどこのフランチャイズに加盟するかが重要になります。
筆者の考えでは大手コンビニ3社(セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン)に加盟することをオススメします。
理由としては利用客が圧倒的に多く、ネームバリューが高いので初期の段階から売上を確保することができる可能性が高いからです。
本部側のサポートも充実していてコンビニエンスストアとして、加盟店としても安心して取引ができます。
ただし新しい場所での開店で加盟する場合、本部側が提示する売上見込みが実際に開店してからの売上と乖離する場合があるので注意が必要です。
既存店のオーナー変更の場合は前オーナーの販売実績を確認できると実際の売上の金額が想定出来るので安心です。
その他にも店舗の立地や周辺の開発状況によっても売上が変わっていきます。
特に競合店舗が近くに出店した場合は売上が激減する場合も多く、周辺の状況も常に確認することが必要です。
コンビニオーナーは儲かるのか
コンビニエンスストアの経営が契約したときの予想通りに行くのであれば、通常の会社員程度の収入にはなります。
オーナーは労働者ではないので労働基準法に縛られることなく自由に働くことができますが、給料を保障されることもありません。
加盟時に予測した通りの売上があれば、人件費を削減したり商品仕入れの工夫により利益をあげることも可能です。
ある程度の売上が確保できれば複数店舗の営業が売上増加に有効です。
複数店舗経営のオーナーは意外と多く、大手コンビニ本部では店舗数の77.6%が複数店オーナーで運営されています。
また、30%から47%のオーナーが複数店舗を経営していて複数店舗経営により営業効率を上げて利益の確保を行っています。
複数店舗経営=儲かるとは限りませんが、1店舗だけの運営よりは可能性が高くなります。
しかし店舗数が増えると売上が増える半面、経費も増えていくのでより経営手腕が必要になります。
コンビニの経営は本部へ加盟店として投資しただけであって収入が保障されるわけでは無く、本部が準備した店舗やオーナーの経営手段で儲けが出るかが変わってきます。
時給換算したオーナーの給料
オーナーの給料は売上からすべての経費を除いた分がオーナー取り分として残ります。
店舗やオーナーによって儲ける金額は違うため時給の換算することは難しいですが、労働基準法に縛られることがないオーナーは一般的に労働時間は長くなります。
当然残ったオーナー取り分を労働時間で割れば時給換算できますが、筆者の経験から最低時給を割る事も少なくありませんでした。
しかも勤めによる給料とは違い、店舗の売上によって変わるため毎月同額にはなりません。
生活費をはじめ借入金支払、年金や保険料などの支出を考えると、毎月の収入が一定ではないことはかなりのストレスにつながります。
内部保留できるほど余剰利益が出ていればよいですが、なかなかそのような店舗は多くありません。
コンビニエンスストア経営を始める時は資金に余裕をもって始めることが大切です。
立地条件が良ければ儲かることは儲かる
ほとんどのオーナーは本部が準備した店舗で営業する形で契約を行うことになりますが、契約の種類によってロイヤリティ(本部に支払う手数料)の比率が変わります。
本部が準備した店舗で経営する場合はロイヤリティが高く、自分の土地や建物を利用する場合は約半分ほどのロイヤリティになります。
ロイヤリティは契約するコンビニ本部によって異なりますが、自分の土地や建物で始めると儲かる確率は高くなります。
コンビニは立地条件によって売上が大きく変わります。
自分の土地や建物で無くてもよりよい立地で開店することができれば大きな売上を獲得できる可能性があります。
コンビニ本部開発部のスタッフとよく話し合い優良な物件を提供してもらうことが、儲ける店舗の中でも一番大切なことになります。
また、自分でも情報を集め分析し売上が上がりそうな場所を開発部に提供することも必要です。
筆者は「コンビニの売上は場所が9割」と思っています。
本部にまかせっきりでは無くて自分自身の考えをしっかり伝え、十分に話し合いをすることで儲かる立地につながります。
コンビニオーナーと本部の関係
コンビニオーナーと本部の関係が良好な方がよりよい経営につながります。
オーナーと本部の店舗担当者は適宜店舗指導や打ち合わせを行います。
オーナーだけではなく主な店舗スタッフにもコンタクトを取り、店舗運営がうまく回るようにしてくれます。
店舗担当者は定期的に交代しますが、基本的な業務はほとんど変わりません。
しかし店舗担当者のレベルによって店舗への指導力が違い、レベルの高い担当者の時にはイベントの商品販売(クリスマスケーキやおせち)の実績が上がる傾向があります。
基本的に店舗は本部の意向に沿った経営を行いますが、店舗独自の施策や装飾が可能です。
例えばPOP(商品説明)等は本部から定期的に送られてきますが、店舗独自で手書きPOP等を作成しておすすめ商品を展開します。
店舗担当者は展開について本部の意向と合う場合は許可しますし、そうでない場合は修正・撤去の指導があります。
また、店舗担当者との関係が良好な場合、地域の支店責任者から特別なセールや実験的な施策を受けて行うこともあります。
本部との信頼関係が強い店舗はたくさんの優良な施策やイベントを行う事の他に、新規出店等の情報も多く入るようになり、他のオーナーよりかなり有利になります。
契約書がすべて
基本的に契約書に記載されていること通りに業務が遂行されます。
契約書には営業時間に関することやロイヤリティの計算方法など営業に関することだけでなく有事が起きた時の責任問題など細かく記載されています。
通常の業務を続けている場合は契約書を見ることはありません。
筆者も最初に契約をかわした時と再契約や契約終了の時以外は見ることがありませんでした。
契約書の内容でコンビニを始めたころにインパクトを受けたのが「急遽オーナーが死亡した場合は本部スタッフを派遣し営業を続けます」という内容が記載されていたことでした。
自営業の商売では考えられませんがフランチャイズ契約を結ぶことは、自分では判断の余地がないことがあります。
もし契約書を見なければならないような場合は、現状に満足できていないときになるでしょう。
例えば売上が下がり営業できない状態となり、契約期間内にやめると違約金がいくら発生するかを調べる場合に契約書を見ることになります。
本部側に大きな過失がない限り加盟店側には不利な形の契約になっていることも多く、契約するときは契約書をよく読み理解することが大変重要になってきます。
ニュースである通り店舗側の意見は通らない
基本的に店舗側の意見は契約書に準じた事しか通りません。
フランチャイズ契約を行うときに契約書を精読していれば意見が通ることと通らないことははっきりしています。
大阪のコンビニエンスストアで深夜営業をやめたオーナーと本部側との対立したニュースで最近になって裁判の判決が出ました。
当時(3年前)は本部側の24時間営業を行う旨の契約内容で、オーナーが契約していたのにも関わらず人手不足を理由にオーナーの判断で時短営業を始めたのがきっかけといわれています。
コンビニエンスストア本部側は店舗へのクレームの多さから契約解除になったと訴えていますが、オーナー側はそのように思っていまいようです。
最近では契約の見直しで時短営業を認めるようになってきていますが、時短営業をした場合は3〜5%のロイヤリティが加算され、オーナー側の儲けは少なくなります。
ニュースで取り上げられたことは極端な事例ですが、契約事項に添えないような営業を行う場合はフランチャイズから脱退することも必要です。
逆に売上が上がる施策などを提案した場合などは、本部側が積極的に協力してくれることもあります。
本部との良いコミュニケーションによって事前に大事に至らないようにすることも大切です。
コンビニFCになるために必要なもの
コンビニエンスストア加盟しフランチャイズ契約を行うにはいくつかの条件があります。
比較的簡単に加盟することが可能なコンビニエンスストアですが、主に必要なものは下記の5項目になります。
- 20歳以上(60歳以下)
- 店舗専従者2名
- 開店時必要資金
- 契約年数5年~15年
- 外国人の方は在留資格(永住者・特別永住者)が必要
20歳以上で商売に前向きな方、加盟本部によっては60歳以下の年齢制限があります。
店舗専従者が2名以上必要です。
例えば本人と配偶者や兄弟など経営に専念できる方が必要になります。
専従者2名が店舗運営の主力となり、その他にアルバイトを雇用し24時間営業ができるようにします。
一般的にオーナーと店長といった位置づけとなり日中と夕夜間の担当で運営することが多くなります。
夫婦で行う場合生活の時間帯が正反対になるので覚悟が必要です。
加盟本部によって違いますが契約金や運転資金など300〜1000万円必要です。
契約プランによっても違いますが、本部が店舗を準備してくれるプランが少ない資金で始めることができます。
一番少ない資金で始められる契約はすべて本部が準備してくれるプランになります。
300万円ほどで始めることができますがロイヤリティは一番高く、オーナーの手取りは少なくなります。
ロイヤリティが一番低く抑えられる契約は自分の土地・建物で営業するプランです。
加盟本部によって異なりますがオーナー取り分は高額になる場合もあります。
契約年数もプランや加盟本部によって異なります。
- セブンイレブンは15年
- ファミリーマートは10年
- ローソンは5年及び10年
「10年ひと昔」といわれるように開店10年後はかなり状況が変わってきています。
開店する地域の状況や人口推移など自分自身でもきちんと調べて判断することが重要です。
外国人の方がオーナーになるには在留資格(永住者・特別永住者)が必要です。
開業資金はどのくらい必要か
開業資金は加盟本部によって異なりますが、比較的少ない資金で始めるプランで各本部を比較してみます。
セブンイレブン | ファミリーマート | ローソン | |
契約プラン | Cタイプ | 1FC-A | FC-Cn、FC-5Cn |
契約金など | 260万円 | 150万円 | 210万円 |
その他準備金 | 150万円 | 50万円 | 100万円 |
合計 | 410万円 | 200万円 | 310万円 |
契約年数 | 15年 | 10年 | 5年または10年 |
※各社のHPより引用
あくまでも加盟本部が公表している金額なので最低このくらいは掛かりますといった金額です。
実際にはこれ以上掛かるので始めるのであればプラス100〜150万円位準備しておくと安心です。
開店後の生活費などの資金が別途必要になり、本部から振り込まれるまでのタイムラグがあるため、2〜3か月は生活できる分の現金を準備しておく必要があります。
またゴールデンウイークや年末年始には予備の釣銭を準備しなくてはなりません。
4〜5日間金融機関が開かないと小銭だけでなく千円札も不足します。
筆者の店舗では年末年始に毎回100万円分の千円札を準備していました。
当然その資金はオーナーが準備する必要があるので資金的に余裕を持った運営が必要です。
コンビニオーナーの労働時間
24時間営業している店舗でのオーナーの労働時間は、24時間働く覚悟が必要です。
基本的に2名の店舗専従者とアルバイトでシフトを作成していきます。
24時間営業の場合は専従者のオーナーが12時間、専従者の店長が12時間店舗に張り付き、その他に必要な時間をアルバイトを雇用して運営します。
もちろん店舗の運営がうまくいき、オーナーや店長がいない時間帯もきちんと運営できる場合は短時間でも結構です。
アルバイトがたくさん雇用できて人件費を掛けても、オーナーの取り分が十分であれば専従者の働く時間は短くても構いません。
しかし大半の店舗は人員不足によりシフトが回らずに、オーナーや店長が長時間拘束されているケースがほとんどです。
実際に筆者は急なアルバイトの休みなどが重なり34時間連続勤務したこともありました。
また、国内のコンビニエンスストアの店舗数は飽和状態で既存店の売上は頭打ちです。
最低賃金の上昇、電気水道料の値上げで経費が増えていく中で十分に利益を確保できている店舗は少なくなってきています。
オーナーの労働時間は店舗にいる時だけではありません。
深夜帯の担当をしていても金融機関や役所などに行く時間は決まっているので、寝る間を惜しんで働いているオーナーも多くいます。
自宅で休んでいる場合も店舗は営業しているので、事故や事件などが起こった場合は対応が必要です。
筆者も実際に店舗に車が突っ込む事故は24年間で5回経験しました。
そのうちの1回は入院中でしたが、対応のために強制退院した経験もあります。
売上とアルバイト次第で雲泥の差
儲ける為には高い売上を確保できる店舗で教育の行き届いたスタッフを配置することです。
売上が高い店では資金的にも余裕ができるので、スタッフの教育への投資が可能となりクオリティーの高い人材を育てることができます。
逆に売上が低いとオーナー自ら店舗に拘束される時間が長くなり、生活することで精一杯となり必要な投資に回すことができなくなります。
売上が安定している時期に新店舗を確保したり、アルバイトから社員に転換したりと投資することでさらに組織の増強を図ることができるのですが、実際には難しい問題です。
コンビニ起業はオススメしづらい?
現在のご時世で脱サラや独立しようと思っている方にコンビニエンスストアはおすすめしません。
しかし、国内に数万店舗あるコンビニ業界では、技術的な進化が加速し新たな店舗の出店が考えられます。
特に経営を圧迫する人件費に関してはAIを使った無人コンビニや、遠隔操作で行うことが可能な商品補充など新しい技術でどんどん進化していく事でしょう。
少ない人数で多くの店舗を運営できる未来のシステムになれば、コンビニオーナーへの道も悪くないかもしれません。